アートを深く見つめ
ともに生きる喜びを
再発見する。
2022.6.30発売
Drawing: Peter McDonald, Night Cave, 2013 / Acrylic gouache on paper
ABOUT THE BOOK
本について
革新的な表現を生んだ
アーティストたちの実践に学び、
凝り固まった現実をときほぐす
“知恵”を手に入れよう。
序 章 なぜいま「観察」なのか
再発見される肉体回帰のアプローチ
第1章 見ているようで、見ていない
私たちはいかにして観察力を失ったか
第2章 革新を生んだ観察者たち
6人のアーティストに見る深い観察の物語
第3章 深い観察のためのプロトコル
現代によみがえる秘密結社の流儀
第4章 練習してみよう!
紙上からはじめるディープ・ルッキング
第5章 「適応」のための観察
危機の時代を生き抜くために
坂口恭平
「BE ACID. ACIDをTAKEせず、あなた自身がACIDであれ」
推薦!
ロジャー・マクドナルド著
想像力を蘇らせる深い観察のガイド
DEEP LOOKING
ISBN978-4-9912475-0-7 C0010 定価:本体2,200円+税
2022.6.30発売
吉本ばなな
「創造性を決して失わずに論理的にアートを読み解く底力、日常にそれを自由に還元する方法が丁寧に描かれている、すばらしい本。」
“It is a wonderful book that allows the mind to freely jump from dark to fortuitous without losing logic.”
ABOUT THE AUTHOR
著者について
ロジャー・マクドナルド
Roger McDonald
東京生まれ。8歳から英国で教育を受ける。大学で国際政治学を学び、オーストリアにある欧州平和研究センター(European University Center for Peace Studies)で半年間、平和学を学ぶ。その後、カンタベリーにあるケント大学大学院にて宗教体験と神秘学を専攻、サイケデリック文化や禅と芸術について研究を行う。博士課程では『Outsider Art』の著者ロジャー・カーディナルの指導のもとモダンアート絵画と神秘主義(特に禅とアメリカの画家マーク・トビー)について研究する。この頃(1990年代半ばから末にかけて)、広島県にある神勝寺の国際禅道場にて2年連続で夏の修行をしたほか、シャーマニズムの研究者テレンス・マッケナのワークショップにロンドンで参加する。大学院修了後、1998年に日本に戻り、インディペンデント・キュレーターとして活動を開始、アーティストたちとともに展覧会やイベントをつくる。2001年に仲間たちとAITを設立、翌年にNPO認定される。AITではおもにアートの学校MAD(現・TAS*)のプログラム・ディレクションを行う。また、2003年から2013年まで東京近郊の美術大学で非常勤講師として教鞭をとっていたほか、2001年の第一回横浜トリエンナーレでアシスタント・キュレーター、および2006年のシンガポール・ビエンナーレでキュレーターをそれぞれ務める。また、2017年にはアウトサイダー・アートの大規模展覧会「ミュージアム・オブ・トゥギャザー」を東京でキュレーションする。そのほか、さまざまな展覧会やアート・イベントのキュレーターを務める。2010年に長野県佐久市望月に移住し、2011年に「フェンバーガーハウス」を設立。以降、館長を務めながら合宿やワークショップをリードしている。このときから「ディープ・ルッキング」の実践を始め、深い鑑賞を促す「ひとり絵画鑑賞部屋」やグループで深い音楽鑑賞を行う「レコード・サンドウィッチ・クラブ」を開催する。また、この時期から自身でもロンドンのナショナル・ギャラリーや東京国立博物館の東洋館で深いアート観察を実践し、その強烈な可能性に目覚めていく。2016年には観察実践集団「ESTAR(SER)」の活動に加わり、アメリカとブラジルで行われた国際会議にも参加。また2018年夏には、アメリカ西海岸にあるカウンター・カルチャーの聖地エサレンで、アーティストのアンナ・ハルプリンがリードする最後の夏のワークショップに参加。そしてこの年から気候危機について研究しはじめ、2019年に地元・望月地域の市民運動グループ「MOACA」を仲間たちと設立。現在、地域や学校で気候危機や適応に関してのレクチャーとディスカッションを積極的に行っている。2021年、「ザワメキアート」展キュレーター。また、同年より多津衛民芸館理事を務めている。
*TOTAL ARTS STUDIESについて
本書は、「TOTAL ARTS STUDIES(TAS)」のプログラムのひとつである「崩壊の時代の芸術体験」コースで筆者が話している内容と連動しています。不確かな時代における生き方や適応、精神について学びながら、芸術の思考・実践を通して想像力/創造力をトレーニングするオンライン講座です。24本の動画レクチャーをそれぞれ心地よい環境や好きなタイミングで視聴できるほか、2ヶ月に1回、インストラクターと情報・知識の交換ができるグループ・エクササイズも開催しています(別途料金、TASプレミア・メンバーのみ)。さらに詳しく知りたい人はウェブサイトを訪れてみてください。
MESSAGE FROM ROGER
PREVIEW
試し読み
はじめに 「深い観察」を体感する
まず、次の絵をよく見てみてほしい。
どんなことを感じただろうか。比較的有名な作品だから、アーティストは誰で、作品名は何、といった固有名詞が先に浮かんできた人もいるかもしれない。
あるいはそれらの情報を知らなかったとしても、
「これは印象派だろうか」
「こんな深いブルーで表現できるアーティストといえば……」
「現代というより近代の美術館で見かけそうな作品だな」
という具合に、表現技法や作者名、制作時期などを推測した人もいるかもしれない。
ここで、以下の手順にしたがってもう一度、前ページの絵を見てみてほしい。今度はなるべく時間をかけ、丁寧に見ることも意識してほしい。
1.この作品で描かれているモチーフの形(フォルム)を目で追う。
2.作品を構成する各要素に注目し、それらがお互いにどのように関連しているかを考える。
3.小さくなった自分が、その作品の世界の中に入り込んだらと想像する。
*
最初に何も言われずに見たときと比べて、どのような違いが感じられただろうか?
特に注目してほしいのは、絵の印象というよりあなた自身の現在の状態である。慌ただしく過ごしている普段より、わずかでも心に「スペース」が生まれたように、感じられないだろうか。あるいは、感覚がいくらか研ぎ澄まされ、意識が普段とは異なった状態にあるように、感じられないだろうか。
もしそうだとしたら、いま体験したことをなるべく忘れないように、本書を読み進めていってほしい。セザンヌやピカソといったアーティストたちもまた、同様の体験を日々経験しながら、歴史に残る作品を生み出してきた。創造力を高め、凝り固まった考え方を打ち破り、まだ誰も見たことのない画期的な作品を生み出す。それを可能にするのが、ほかでもない「深い観察(ディープ・ルッキング)」なのだ。
読者のなかには、これは単なる「アート作品をよりよく鑑賞するテクニック」ではないかと思う人もいるかもしれない。しかしそれは、深い観察の本当の威力をまだ知らないからだ。この不確かな時代において未来を想像し、自らの手で切り拓いていく知恵を与えてくれる、知られざる力を。
このイントロダクションでは、多くの読者にとってあまり馴染みがないであろう「深い観察」という概念を、まずは言葉による説明抜きに理解してもらいたいと考え、第3章で紹介する深い観察の「基本のプロトコル」を最初に体験してもらった。一切説明がなかったので、たくさんの疑問が湧いているかもしれない(結局この作品はなんなのか、という声も聞こえてきそうだ)。
でも、安心してほしい。本編では順を追って、できるだけ丁寧に説明していくつもりだ。そして、なぜ最初に「深い観察」を言葉ではなく体で理解してほしかったのかも、途中でわかってもらえるのではと思う。
本書が、読者にとって価値ある時間をもたらすことを願っている。
ロジャー・マクドナルド
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